「ユーリンちゃんっていうのか?」

剣を腰にさしながら灯摩が聞き返した。

これからまたバーサーカーを狩る為に森へと赴くところである。

ウィンリアは弓の張り具合を確認しながらそうよ。と頷いた。

「すごい可愛い14歳の子よ。それに明るくて話し易いの!もうすぐ来ると思うわ。」

辺りを見回し、付け加える。

「可愛い子ねぇ…。それにしても14歳か…。ハンターの資格取ってるってことは、家庭に事情があるってことだな。」

ウィンリアに聞こえないように灯摩は呟いた。

本来女性がハンターをする場合は、15歳以上でなければいけないのだ。

それ以下でハンターができるのは、家庭に事情のある者だけである。

ウィンリアもそれくらいは知っているだろうが、優しい両親と何不自由なく過ごしてきた彼女にとって家庭の『事情』というものは無縁だった為その辺りには疎い。

同じ『事情』持ちとしては、灯摩はユーリンに同情する形になった。

そんな話をしていると、一人の少女が二人に近付いてきた。

髪は三つ編みにしてあり、虫眼鏡のレンズのような大きくて丸いメガネをかけ、いかにも「学校の帰りです」というようなブラウスに黒スカートという格好である。

唯一の違和感と言えば、手に持たれている長い袋だった。

少女は二人の前に立った。

「あの…きょ、今日は宜しくお願いします!出来ればお二人の足を引っ張らないように頑張ります!」

始めキョトンとしていた二人だったが、少女の発したセリフのお陰で彼女が何者かを悟る事が出来た。

この大人しそうな少女がユーリンだったのだ。

初対面の灯摩はさほど驚いてはいなかったが、直接会ったウィンリアは昨日との変わりぶりに目を丸くしてしまう。

格好はともかく、ここまで奥手な少女ではなかったはずなのだ。

「ユ…ユーリン?貴女熱でもあるの?」

手を当ててみるが、特に熱いわけではない。

「何をおっしゃるんですか?ウィンリアさん。私は今日も健康ですよ。」

何故ウィンリアが動揺しているのかまるで分からないように首を傾げる。

『……………。』

しばらくの間。

「…まぁ…そろそろ行こうか。二人共。」

沈黙にたまりかねた灯摩が促し、三人は道を歩き始めた。

――――――――――――――――――――――



しばらく歩いていると、喜癒のいるルシフェル教会が見えてきた。

教会は森に近い場所に建っているので、森に行こうと思えば必ずその前を通る事になるのだ。

よく見てみると、入り口へと続く石段に竹箒を持った喜癒がのほほんと座っていた。

「喜癒くん!こんにちわ!」

ウィンリアが元気よく声をかけると、喜癒はハッと我に返ったように立ち上がった。

どうやら温かな陽気に照らされて居眠りしていたようである。

「うぇ…あ!ウィンリアさん!灯摩さん!お、おは、おはようございます!!」

あたふたしながらペコリとお辞儀をしてくる。

「こんにちわ。喜癒くん、一つ言うけどもうお昼すぎなんだよ?おはようは遅いかな。」

灯摩が笑うと、喜癒は顔を真っ赤にした。

「あの…お二人は神子様と知り合いなんですか?」

初対面のユーリンが話しに入ってくる。

どうやら喜癒が神子ということは知っているらしい。

喜癒はそんなユーリンに慌ててお辞儀をし、ユーリンはつられてお辞儀を返した。

「えぇ。この前のお披露目会で色々あってね。今ではお友達☆」

嬉しそうにウィンリアは喜癒に抱きついた。

「そうなんですか。あ、神子様挨拶が遅れました!ユーリン・メイヤードです。宜しくお願いします。」

「あ、はい!僕は聖宮喜癒といいます!こちらこそ宜しくお願いします。」

お互い顔を紅潮させ、かなり焦っている。

「ほらほら、そんなに硬くなるなって…。そうだ、喜癒くん。その後神子の仕事の調子はどうだい?」

二人をなだめながら灯摩が喜癒に訊く。

「お仕事ですか?今のところは順風満帆といった感じです。信者の方たちに聖書をよんで差し上げたり、今までの生活と何ら変わりないですから。…ただ、一つだけ…。怖くて出来ない仕事があるんです。」

明るく話していた喜癒だったが、ふと悲しそうな顔になる。

「どんな仕事だい?」

更に問われ、喜癒は一度うつむいた。

しかし思い切ったように顔をあげ、灯摩を見つめる。

「バーサーカーを狩ることです!」

……一瞬一同の間を風が吹いた。

「………えっと…、それってバーサーカーハンターになるってこと?」

焦って灯摩が言うと、喜癒はコクリと頷いた。

「はい!自分に見合った武器をもち、無粋なるバーサーカーを消滅させることが神子としての最重要な仕事なんです!……でも、僕一人なんて凄く不安だし…まだ一度も戦ったことがなくて…。」

真面目な彼は、自分の不甲斐なさにしょぼんとする。

そんな喜癒になんと言って声をかければいいのか分からず、灯摩は焦ってしまう。

けれどその焦りは、この後更に増徴された。

「だったら、一緒に行く?私達と。」

言ったのは勿論ウィンリア。

「な!お前何…。」

驚いて灯摩は頭に大汗を垂らす。

喜癒も驚いて大きな目を見開いている。

「どうせいつかしなきゃいけないなら、今やっても一緒でしょ?それに突然一人なんて無理よ。私だって一人で戦った事ほとんどないもん。

早いところ戦い慣れするには、専門業者の私達と行動した方がいいんじゃない?」

もっともなことをケロリと言うのがウィンリアの持ち味である。

彼女の毅然とした(?)態度に、ユーリンと喜癒はきょとんとしてしまう。

「でもお前、こんな突然…。それに喜癒くんを連れて行くなんて危ないじゃないか、もし護りきれなかったら…。」

「大丈夫!私後衛だもん!私と一緒にいればOK!ユーリン前衛でしょ?」

何がOKなのかは今更訊いたところでまたもっともらしいセリフが返ってくるだけである。

ユーリンはコクリと頷いて、先ほどから手に持っていた長い袋から大きなカミソリの様な武器を出した。

「私の武器はこれですから、前衛ってことですね。大丈夫です。頑張りますから。」

言い方からすると、ユーリンはもうウィンリアの案に賛成のようである。

ユーリンはともかく、ウィンリアが一度言い出したら聞かないことを知っている灯摩は怒るを通り越して呆れている。

「ったく…。じゃあ今日は下級バーサーカーの出没地帯に行くか。突然中級だ上級だは難しいし危険だからな。喜癒くん、行くかい?」

一応訊いてみると、喜癒は顔を真っ赤にしてコクコクと頷いた。

「はい!親切は素直に受ける物だってお父さんが言ってましたから!僕、頑張ります!」

そしていつものようにペコリと深くお辞儀をした。

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某RPGシリーズが好きなので、四人でダンジョンへ行くみたいな話をかきたいな〜見たいなのりで書いた第三節。

感の言い方ならユーリンちゃんの設定がもうわかったと思います。

ただ灯摩たちが気付くのはしばらく後の予定。

この四人だとウィンリアのみ後衛になります。


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