「きゃぁぁああ!!」

森に女性の声が響く。

彼女の姿から、職業はバーサーカーハンターであることがわかる。

しかし右手に持たれた剣は最早飾りに等しく、カタカタと握られた手と共に震えている。

彼女の前にはあの黒い服の少女が立ちはだかっていた。

そして更に少女の後ろでは、ハンターの女性の仲間であった男性がバーサーカー達の群れの中で動かなくなっている。

「最後は貴方だけよ。愚かな人間さん。」

武器を構え、女性に向ける。

女性は青ざめた顔で息を呑んだ。

「何か言い残す事はない?誰に伝えるってわけじゃないけど。」

微笑みながら言う少女に、女性は諦めた様子で口を開いた。

「あんたみたいな偽りのバーサーカー…いつかきっと…私たちよりも強いバーサーカーハンターに殺されるわ!せいぜい覚悟しておく事ね!!…私は…あんたみたいな小汚いバーサーカーに殺されないわ!!」

その直後、女性は自らの胸を剣で貫いた。

すぐに動かなくなる女性を見て、少女は溜め息をつく。

「人間ってなんでこう自分に非情になれるのかしら。」

呟くと、彼女の後ろにもう一人少女が現れた。

全身に濃いピンクのドレスを身にまとって、ブロンドの髪は綺麗にカールされている。

「何言ってるのよぉジキタリスちゃんったら!どぉせこのお姉ちゃんが自殺しなくても、そのあとすぐにジキタリスちゃんがとどめさしちゃうんだから結果としては同じじゃなぁい。」

黒服の少女をジキタリスと呼びながら、少女は歩み寄ってくる。

対してジキタリスと呼ばれた黒服の少女は、一度不機嫌そうに髪をかき撫でた。

「うるさいわよ、ハイビィ。一つ言わせて貰うけど、あんたは私より残酷なんだからね。」

ピンクの服の少女をハイビィと呼びながら、ジキタリスは足元に目をやる。

ハイビィの足元には、先程の女性と男性の仲間であった「誰か」の白骨が転がっている。

「可愛い顔して趣味悪いわよ。骨までしゃぶるんだから…。」

嫌味っぽく言うジキタリスに、ハイビィはびしっと人差し指を向ける。

「何言ってるのよぅ!カルシウムは身体にいいのよ?ビバビバ♪」

そして踊りながらジキタリスに抱きつく。

「ところで、ジキたん。あの計画は上手くいってるの?」

擦り寄りながら質問してくるハイビィをうっとうしそうにしながら、ジキタリスは口を開く。

「私はジキタリスよ!ジキたんって呼ぶなって言ってるでしょ?!………計画の方はまだ分からないわよ。私が知らされてるのは、この国・アテナ王国を下等バーサーカーを率いて潰す事だけだもの。詳しい作戦は私じゃなくて『ゼフィランサス』が考えてるんだから、あっちに訊けば?」

言いながら、自分の前で死んだ先程の女性を抱き起こす。

「ハイビィ、貴女は先にあいつのところに行ってきてくれない?私はこの女の血を飲んでから行くから。」

「ん〜?わかった〜。じゃぁ先に行っとくよ。ゼフィー遊んでくれるかな?」

「暇だったら遊んでくれるでしょ。ほら行って行って!!」

「は〜い。」

ジキタリスにシッシッと手を動かされて、ハイビィは頬を膨らませながらもその場から消えた。

「…………………。」

残ったジキタリスは女性を地面に寝かせなおし、その場にペタンと腰を降ろした。

そして女性の胸に突き刺さったままの剣をズルリと抜く。

剣先からは、まだ温かい血が滴り落ちた。

「…まったく…何で…自分で自分を殺せるのよ…人間は…。」

何故か溢れる涙を、紅く汚れた手で拭う。

「だから人間なんて嫌い…。憎い…。簡単に同じ人間を殺せるんだ…。…だからあいつらも…私を簡単に殺したんだ…。」

何かを思い出すように、次から次へと溢れる涙が止まらない。

しかしそんな弱い自分は、彼女にとって一番許せなかった。

女性の着ていた服の端をやぶり、ハンカチ代わりにして涙を拭く。

そして布を捨てるように地に投げ、立ち上がった。

「私は許さないわ。人間を…私をこんな姿にした人間を…。そして…あの女を…。」

蒼い空を見上げ、決心した様に目つきを鋭くする。

「必ず探し出して…殺してやるわ…。…ユーリン・メイヤード!!!」

……ジキタリスは、この時はまだ気付いてはいなかった。/

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予告無しにちょいグロ表現すみません;;

敵側の一コマを書きたかったので書いてたらグロくなりました…と思います。





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