翌日。

いつもの鎧と剣を身に付けて、灯摩は家をでた。

紅い太陽が空に燃えている、晴天だ。

「早く行こ!灯摩ちゃん。私早くリトレアおじさんに会いたい!」

ウィンリアも早朝から灯摩の家に来て、やる気満々である。

灯摩はウィンリアにそうだな。と返してから歩き出し、ウィンリアもそれに続いて歩き始めた。

二人は軽い雰囲気で出発しているが、もし第3者が彼等の行き先を聞いたなら驚いて目を丸くするだろう。

ウィンリアのいう【リトレアおじさん】とは、ただのおじさんではないのである。

簡単に言えば、国を一つ背負っているおじさんなのだ。

 

しばらく歩き続け、灯摩たちは彼等の住む地域も圏内に入っている国・アテナ王国の城下町に着いた。

城下とあって人の数も多く、町中が活気に満ちている。

「ねえ灯摩ちゃん!ちょっと寄り道していこうよ!」

はしゃぎながらウィンリアは灯摩のマントを引っ張る。

「寄り道って…。お前なぁ?今はリトレアさんに漬物届けるほうが先だろ?」

「だってだって〜、灯摩ちゃんったら電車に乗ればいいのに「歩きの方が冒険できる。」とか訳のわかんないこと言ってさ〜?もう私脚フラフラ、喉カラカラ、頭グラグラなのよ!ちょっとお茶するくらいいいでしょ?」

確かにハンターを仕事にしているとはいえ、今ごろの、しかもまだ16歳の少女に約3時間歩き続けさせたあげく、休憩無しでは可哀想であった。

「…ったく、しょうがねぇな…;じゃあちょっとだぞ?」

灯摩が承知するとウィンリアは可愛くぴょんと跳ねた。

「きゃは〜い!灯摩ちゃん大好き☆私あそこがいいな〜!」

一気にテンションの上がったウィンリアは、灯摩の腕を掴んで走り出した。

「おいおい…そんなに急がなくても店は逃げないって……うわ!危ない!」

「え?…うきゃぁ!!」

前を見ていなかったウィンリアは、灯摩の注意もむなしく見事に通りがかった人にぶつかってしまった。

同時にドシンという大きな音がして、ウィンリアはその人の上に思いっきり尻餅をついた。

灯摩にはその人が「グエッ」っと言ったのが聞こえた。

「大丈夫か?ウィンリア。ほら、早くどいてやれよ!」

「うえ?うわわわ!!すっすみません!!ごめんなさい!!」

一瞬で自分の立場を把握したウィンリアは、大慌てでその人の上から退き謝罪の言葉を連呼する。

そんなウィンリアに向かって、その人は起き上がりながら手をひらひらと振った。

「謝らなくていい。」という雰囲気だったが、流石に悪いのはこちらなのでウィンリアもどんどん焦ってしまう。

「あの、あの!なにかお詫びを!」

言いながらウィンリアは手を差し出す。

その人はまだ俯いたままだったが、そんなウィンリアに初めて口を開いた。

「慌てやすいのは姉貴似だな、ウィンリア。」

―――――。

一瞬灯摩とウィンリアの動きが止まる。

しかしその人が立ち上がった所で、一斉に二人のテンションは高まった。

「秋斗さん!」

「秋斗おじさん!!」

叫びながら、二人はその人の…秋斗の胸へとダイブした。

彼、秋斗はウィンリアの母・冬の弟で灯摩にとっては目標にしていた男性である。

昔は有名な大学に通っていたが、現在はアテナ王国の軍隊の総隊長をしている。

因みに城内女性限定アンケート・抱かれたい男第1位であるらしい(※冬談)

秋斗は擦り寄ってくる二人に少々困った顔を見せ、慌てて引き剥がした。

「こ、こらお前等;街中で抱きつくな!恥ずかしい!」

制してみるが、久々の再開の興奮は収まらない。

「秋斗さん、お久しぶりです!ドルリアさんには他国に遠征に行かれてるって聞いてたんですけど、どうだったんですか?」

「あのね?秋斗おじさん!私この前テストで95点もとったのよ!褒めて褒めて!!」

「あの国は医学が進歩してるって聞きます。何か治癒術とか見付かりましたか?」

「しかも大っ嫌いだった数学でよ?!すごいでしょ!私頑張ったんだから!」

二人が同時に違う事を言うので、流石に秋斗も焦ってくる。
「おいお前等…もう少し落ち着け!」

バシバシッ!!

『いった〜っ!』

突っ込みという名の制裁をくらい、喋り続けていた二人はやっと黙った。

「人の話を聞かないのは子供の証拠だ!特に灯摩!お前も今年で22だろ?落ち着くということを知れ!」

怒られて灯摩もウィンリアもしょぼんとしてしまう。

「……まぁいい。確かに久しぶりだからな…。…ウィンリア。」

「は!はい!!」

「大した者だ、95点なんて。その調子で頑張れよ。」

「!!あ、うん!頑張る!」

「灯摩、遠征先の国は確かに医学がうちの国より進歩していた。向こうでは蘇生術の研究がされていたぞ。連れて行った兵士達も、ある程度の救護術を教授してもらった。実は最初気乗りはしなかったんだが、なかなかいい経験になったな。」

「!そうなんですか!さすがですね!!俺あの国にもいつか訪れてみたくって、すごく興味があったんです!ありがとうございます!」

二人があれほどごちゃごちゃ言っていたにもかかわらず、秋斗は二人にちゃんとした返答をした。

この辺りが『よくできた男』感をかもし出しているのであった。

「ところで、お前等何でこんな所にいるんだ?」

「あ、俺達今日ドルリアさんに頼まれてリトレアさんに漬物を届けに来たんですよ。ほら、これ!」

灯摩が手に提げていた袋を差し出す。

「あー久しぶりだな、この匂い。後でリトレアに頼んで分けてもらうかな。」

身内内ではもっぱら評判のこの漬物は、秋斗の好物でもあった。

「秋斗おじさん。秋斗おじさんもお城に帰るんでしょ?一緒に行こうよ!」

自分の周りに沢山のハートマークを浮かべながらウィンリアが秋斗に飛びつく。

「そうだな。暫く留守にしてたし早めに状況を知りたいし。」

「よぉ〜し!んじゃレッツゴ〜!」

秋斗の台詞を聞くなりウィンリアは彼のマントと灯摩のマントを掴んで走り始める。

「お、おい!お前疲れたって…。」

「何言ってるのよ灯摩ちゃん!お城に行けばきっとただでお茶もらえるのよ!節約節約!」

走るウィンリアについていきながら灯摩が訊くと、ウィンリアは目を輝かせてそう叫んだ。

秋斗はついて行きながらも、ウィンリアからかもし出される自身の姉の姿に頭痛を覚えたのだった。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

TC第一話二項目です。

皆の秋斗おじさ…お兄さんが登場です。

読んで分かるように主要キャラです。(分かるんだろうか。)

一話は四項までの予定なので、あと二つ。書き終わってはいるんですが、おりをみてUPしていこうと思います。

キャラページはあと三人新キャラが出るまでお待ちください(>□<)


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