パシャ〜〜〜ンッ

「ぶっぐはっ!!」

突然の衝撃に灯摩は目を覚ました。

「カハッ!ゴッホゴホ…な…何だよ一体…?」

どうやら誰かに水をぶっ掛けられたようで、雫が器官に入り灯摩は咳き込んだ。

「おはよ〜ございま〜すv灯摩さんv」

そんな彼の前にはバケツを持ったハイビィがしゃがんでいた。

「なっ…あ、そうか…俺たちゼフィランサスに眠らされて…。」

じわじわと蘇ってくる記憶に、灯摩は頭を押さえる。

「そうで〜すvんで朝になったから起こして来いって言われたから起こしてあげたのv目覚めはどう?」

ニコニコしながら聞いてくるハイビィに、灯摩は溜め息をつく。

「お陰さまで最高だよ…。」

皮肉のつもりで言うと、ハイビィの顔はパァッと明るくなった。

「最高!?良かったぁv私誰かに起こされることはあっても起こしたことってなかったからさぁ。とりあえず水かけてみたの!よ〜し待ってて!あとの二人も今すぐ起こすから…。」

まだ水が入っていると思われるバケツを持って、今度はウィンリアに近付いていこうとする。

「わ〜!コラコラ!俺が起こすから!いいから!」

そんなハイビィを灯摩は必死に止めた。

「よぉ、お目覚めか?」

そうこうしているとゼフィランサスがニコニコしながら現れた。

その手には三枚の皿が持たれており、皿の上には美味しそうなハムエッグとポテトサラダ、トーストが乗っている。

「あ…。」

テーブルに皿を並べていくゼフィランサスを見て、灯摩は一瞬だけドルリアと錯覚してしまった。

「ん?どうした?和食の方が良かったか?」

そんな灯摩に、からかっているのか本気で気にしているのかゼフィランサスは小首をかしげる。

灯摩は黙って首を振った。

パシャンパシャ〜〜〜ンッ

その直後、また水のはじける音が響いた。

「うぎゃっ!」

「ひゃふっ!」

続いて利羅とウィンリアの声。

ハイビィはいつの間にか灯摩の手を逃れ、水掛目覚ましを実行していたのだった。

「ゲホゲホッんだよ!」

「エッホエホ…何よ何よ…何なのよォ!」

二人共先ほどの灯摩と同じような反応をする。

「あはは〜v起きた起きたv」

そんな二人をケラケラ笑いながらハイビィはバケツを振り回す。

『……ハイビィ〜〜〜〜〜〜!!!』

「はへ?」

「んのアマぁ!ぶっ殺してやる!」

「そのドリル髪ひきぬいてやるぅぅう!!」

利羅とウィンリアはハイビィを睨みながら拳を握る。

「え?何で?私何にもしてないじゃん!」

先ほどの灯摩の台詞を鵜呑みにしていたハイビィは、何がなんだかわからない様子である。

『問答無用〜〜〜!!!』

後退りながら逃げるハイビィに二人は飛び掛った。

「にぎゃ〜〜〜!!」

そして三人で暴れ始める。

「……あ…はぁ…;」

「はっはっは。ガキは元気がいいな〜まったく!」

灯摩は呆れて溜め息をつき、ゼフィランサスはその様子を見て笑った。

しかし笑いながら、ゼフィランサスはパンッと大きな音をたてて手を叩いた。

ピタリと止まる一同。

「おら、遊ぶのもそれくらいにしろ。とっとと飯食って、城に行かなきゃなぁ。」

その言葉にウィンリアも利羅も全てを思い出した。

「!!!」

そして二人で突然顔を見合わせると、バッと席についてゼフィランサスの作った朝食を食べ始める。

どうやらあまりにも空腹だったようで、美味しそうな食べ物を目にした瞬間毒でも入っているのでは?などと疑う暇もなくがっついしてしまったようである。

「ほら、お前も食えよ。見ての通り毒なんかは入ってねぇから。」

にっと笑うゼフィランサスに、灯摩は頷いて食事を始めた。

その様子を見て、ゼフィランサスも自分の椅子に腰掛ける。

「食いながらでいいから聞けよ?これからの計画をお前等が寝てる間に考えておいたからな。まず最初にこれだけは守れ。城に行ったら俺様のことは『ドルリア』だと言い張るんだぞ。」

にやりと笑って言うゼフィランサスに、口一杯にポテトサラダを突っ込んでいたウィンリアは慌てて飲み込んで口を開いた。

「そんな…何で?お父さんも一緒に行くんでしょ!?何処に隠してるのか知らないけど、早く返してよ!何で貴方をお父さんだって嘘つかなきゃいけないわけ!?」

彼の作った食事をがっついているわりに、口では反抗的だった。

ゼフィランサスは溜め息を付く。

「そうするといろいろめんどいんだよ。俺様がドルリアとして城に行き、あの秋斗とかいう隊長や兵たちに一番いい策を与えるつもりなんだ。俺様がゼフィランサスとしていくのとドルリアとして行くのでは、まず信用される度合いから違ってくるだろう?折角そっくりな顔してんだ。利用しない手はないぞ?」

そう言われると確かにその通りである。

秋斗達がゼフィランサスの言う事を信用してくれるとは限らない。

しかし今までリトレアや秋斗に沢山の助言をしてきたドルリアとして行けば、首を振るだけでも従うだろう。

「う……。でも……じゃあせめて…少しでいいからお父さんに会わせてよ。元気な姿みたい。」

哀しそうな目で訴えるウィンリアだったが、ゼフィランサスは首を横に振った。

「悪いけどダメだな。しかし…会わせることはできないが、あいつの今の様子なら教えてやる。怪我も無し、病気も無し、吐き気も眩暈も苦労も苦悩も不自由も無し。この廃墟の地下室でゆっくり休んでいる。絶対に危ない目に遭うことはないから、安心しろ。」

手を伸ばしてウィンリアの頭を撫でる。

ウィンリアは突然のことに顔を赤くした。

何しろ片目が赤眼とは言っても、ゼフィランサスは見た目も声も父親と瓜二つなのである。

「………わかった…。」

ウィンリアは俯きながら了承した。

「あとの二人は?どうだ?」

問われると、利羅は頷いた。

「ウィンリアがいいってんなら俺はそれでいい。とにかくウィンリアの親父の無事とバーサーカーを追い返すことを確実に約束してくれるんならな。」

灯摩も頷いた。

「おっし、じゃあ決まりだ。んじゃあそれとっとと食えよ?あ、トイレはそこの青いドアだから。兼用だからレディーファーストでな。」 

言いながらゼフィランサスは懐から昨日つけていた眼帯を取り出し、左目につけた。

「いいか。最後に確認だ。俺様は?」

ビシッとウィンリアを指差す。

「…お父さん。」

 「この眼帯は?」

今度は利羅を指差す。

「入れられてた部屋で滑って転んで打ち付けた。」

利羅は昨日のことを思い出しながら答える。

「灯摩は車ちゃんと運転しろよ?」

「え?あ、はい…って…え??」

自分だけ他と違うことをいわれ、灯摩は少し焦る。

その様子を見てゼフィランサスはケラケラ笑った。

「フッ。頼んだぞ。バーサーカーは免許なんて持ってねぇからな。」

そう言ってゼフィランサスは灯摩の肩を叩き、部屋から出て行った。

「……とりあえず…食べようか。」

「私…行ってくる…。」

残された灯摩達は早いペースで食事に戻り、ウィンリアはそそくさとトイレに向かった。

そして全てが一段落した所で部屋の外に出ると、ゼフィランサスはペットボトルのミネラルウォーターを飲みつつ座っていた。 

「準備は出来たな!さぁ、行くぞ。アテナ城に。」

「レッツゴー♪」

まるで遠足にでも行くかのように、ゼフィランサスとハイビィは楽しそうに廊下を歩いていく。

「あ、ちょっ。待ってよ!」

その様子にウィンリアは慌てて続き、灯摩と利羅も続いて歩き始めた。






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